5月の旬
アワビ
薬剤師 橋本紀代子
お祝いなどの贈答品の包装に使う熨斗。もともとはノシアワビを用いていました。別名を「打ちアワビ」といい、戦国武将が打ち勝つように縁起をかついで食したといわれます。
生で食べるとコリコリした歯ごたえがあり、加熱すると特有のうま味が出てきます。
2022年、クロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビの3種類が国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定されました。密漁、乱獲、気候変動などで激減しているためで、早急な対策が待たれます。
天然アワビの漁獲量は1970年をピークに現在は8分の1に。
北海道や三陸海岸でとれるエゾアワビなどは、養殖もおこなわれています。
漁獲量が多いのは、岩手、千葉、三重などの各県です。
うま味のもとはスタミナがつくといわれるアルギニン、タウリン、グリシン、ベタイン、グルタミン酸などです。目の健康に良いビタミンAやビタミンB1、B2、カルシウムも含まれます。
民間療法では、煮て食べると産後や手術後の体力回復に効果があるとされています。
漢方ではアワビの殻を石決明といい、粉末にして目の病気、膀胱炎、血尿などに用いる漢方薬に配合し、煎じて飲みます。
おいしい食べ方
身も殻もたわしでこすり、水洗いして汚れを落とします。
刺身はスプーンなどで貝柱をはがして身を取り出し、肝とくちばしを取り除き薄く切ります。肝は砂袋を除いて5分ほどゆで、刺身に添えます。
酒蒸しは酒大さじ1/2を振りかけて蒸すだけです。
もち米にアワビや山芋を入れたかゆは糖尿病の養生食。
シイタケ、セロリを加えたスープは美味。大根おろし、しょうゆ、みりんで甘辛く煮付けても。
アワビとホウレンソウの甘酢あんかけも人気の一品です。
【「食べもの通信」5月号より転載】
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